あなたにとって、ムラマツとは?

私が持った始めてのムラマツフルートは、当時習っていた林りり子先生がくださった総銀製のムラマツです。「あんた良く吹けるけど楽器がボロね」と言われて、親にも言えず困っていたら、次のレッスンの時東京から持って来て「これで吹きなさい」と、私にくださったリングキーのオフセットの楽器でした。なんとも豪快な先生でした。
桐朋学園の音楽高校の受験の時まではその楽器を使用し、フルートを始めて一年で合格してしまったのを覚えています。私にとって思い出深いムラマツフルートです。
その後、桐朋の音楽高校に通っていた頃、楽器の調子が悪く困っていたら、またりり子先生に、「ムラマツフルートの工場が所沢にあるから、そこに行って曽根さんというチョビヒゲはやしたおじさんに、楽器の修理をして貰ってきなさい」と言われて行ったのが、当時まだ木造だった工場です。工場の皆さんが前でキャッチボールをやっていて、中に入って行くと先々代の奥様がお団子とお茶を持って来てくださるという、私にとっては懐かしい昭和の頃の日本の大切な原体験です。
その時、(工場は今はもう鉄筋コンクリートに変わりましたが)所沢の駅まで送り迎えしてくれたのが、当時まだ若くカーリーヘアーだった、青木宏さんです。彼とは、その後一緒にスイス・ボスビルでのモイーズの講習会(私はまだ高校生でした)にも行き、私がスイスに住んでからのゴールウェイの講習会でもご一緒して、私の良いところ、悪い癖を知り尽くした上で作っていただいたのが、今吹いている24Kのムラマツです。